人と自然の調和を考える
 人類の歴史上この30年間の科学技術の進歩は目をみはる部分があります。資本主義社会は現代人に手軽さ、便利さを提供し、ときには不要不急なものまで提供する「大量生産・大量消費」を進めてきました。その結果が環境汚染であり、自然破壊であって、いずれこのツケは私たちに跳ね返ってきます。

 大昔、人と自然は調和して生きていました。私たちは文明を否定し、電気もガスもない原始時代に帰るべきだと言っているのではありません。ただ人間たちの勝手で他の生物が絶滅し、急速に地球環境が悪化しているという事実に目をそむけるわけにはいきません。

 核物質や合成化学物質など、もともとこの自然界に存在しなかったものを人間はどんどん作り出してきました。それらはすべて人間のエゴイズムから出たもので、自然や自然の摂理に対する人間の身勝手で傲慢な挑戦にしかすぎません。それでも、人間は宇宙や自然の不思議を解明すべく飽くなき追求をやめることはないでしょう。

 化学技術の進歩は日を追うごとにスピード化しています。とくに生化学・物理学の進歩は他の分野に比べてめざましく、ヒトゲノムでは米国のセレラ・ジェノミクス社が各国政府の共同研究テーマであったヒトの遺伝子解読を一私企業でありながら各国政府に先駆けてほぼ100%解読し、特許取得・独占の問題など多方面にわたり物議を呼びました。ヒトの遺伝子が解読されるということは、さまざまな病気の原因や病気になる過程、メカニズムが解明されるということです。

 遺伝子工学は我々の想像を絶する速さで進歩しています。例えば穀物の起源であるイネの遺伝子の解明も随分進んでいます。災害に強いイネの開発も格段に進むでしょう。だからといって遺伝子組み換え工学、植物と動物の遺伝子を合体させる技術は、私たちの子孫への影響を考えると空恐ろしい気がします。

 たしかに地球上に生きる人間の数は年々増加し、いずれ食糧難になることは目に見えています。後進国でいまなお使用される残留性の強い農薬にかわり、害虫に強く収穫量の高い遺伝子組み換え穀物の栽培を推進する動きがあります。

 日本の厚生省は、欧米でも躊躇していた遺伝子組み換え食品の輸入をたった6ヶ月で認可し、いまでは21種類が市場に出回り、いろいろなものに混入しています。マスコミが取り上げ、消費者の不買運動が起きてあわてて表示義務付けなどの対応をしたものの、あとの祭りで大部分がもはや分別できない状態です。

 利益追求ばかりのメーカーや流通、エイズ問題が学習効果にされていない厚生省の安全基準のいい加減さなど、規制緩和と情報公開の時代には生活者自身が他人まかせにせず、しっかりと判断する必要があります。

 その判断基準は「自然や環境にやさしいもの」という大まかな取り決めでよいと思います。