宍道湖・中海・本庄工区問題について

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1.はじめに。

  山陰地方の観光資源の一つ宍道湖・中海は、農地拡大・農業用水確保のため干拓淡水化事業が行われてきています。(淡水化事業については凍結)しかし未着工区間である本庄工区の干陸事業の再開問題や、その水源確保問題などからこの地域をどうするかが、再び議論の的となっています。私は干陸淡水化事業には絶対反対です、ここでは賛否両論をもとに一考察を行ってみたいと思います。

 

2.地質環境。

  宍道湖・中海は日本最大の汽水湖で、多様な生物相を持った古来よりの豊饒の湖です。まずその地形ですが島根半島と中国山地に囲まれた地域の大規模な谷間地形に地層が堆積し水が進入したのが現在の地形です。過去には陸地化あるいは、内海化・淡水湖化した時代もあります。また斐伊川などの河川の流入に伴い、生活雑排水による水質汚染の影響を潜在的に受けやすい環境であるといえます。

  中海に浮かぶ大根島は第四紀のうち海水面が下がった時期(氷河期)に、陸上に噴出した玄武岩質の火山大根島火山の一部が海面に顔を出した島で、地質は陸上で噴出したため多孔質で透水性に富んでいます。そのため孤島でありながら地下の海水の上に淡水の地下水、いわゆる淡水レンズが形成され豊富な水量を保っており、島民の飲料水・農業用水として重宝されています。また、溶岩洞窟が地下を縦横に走っており、この島固有の洞窟性の昆虫・魚類など貴重な生物も生息しています。

 

3.干陸化に伴って生じると考えられる諸問題。

  (1)干陸地について

    本庄工区も含めて中海の干拓・干陸地は農業用地として計画されています、島根県の揖屋干拓地・鳥取県の彦名干拓地はすでに完成し営農している農家もいます。本庄工区はこれらの工区と異なって埋め立てではなく、堤防で仕切って海水をポンプ抜く干陸と言う方法で干拓されます。中海はその海底の半分以上は前述の大根島溶岩で覆われいるため、埋め立てでの干拓の場合は大根島や弓浜半島と同様に雨水や、用水の水で淡水の層ができ海水は進入してこないと考えられますが、本庄工区のような干陸の場合はそこがすかすかのため中海・境水道や堤防の外から海水が進入し吹き出してくると考えられ、始終くみ出しをしなければならないと考えられています。また噴き出す水が海水のためやがて農地には不適当な土地になってしまう可能性が大きいと考えられます。他工区での農地の販売が芳しくないのと農業事情の変化に伴う減反政策などのため、工業用地へ転用を考える向きもありますが同様に塩害・水利などのの理由から製薬・食品・精密機器工業などの有望企業の進出も見込めず売れ残りの問題が生じると考えられます。よって土地の有効利用・公費乱用防止の観点から工法を埋め立て干拓に変えるか、事業自体を中止するかの選択が迫られていると考えます。

 

  (2)若者定住対策の観点から

    山陰地方は高速交通網の整備が遅れ一般に交通の便が悪く、職場も公務員以外、大企業の企業の進出も少なく中小企業が多い。そのため若者の定住地として魅力に乏しく多くの人材が山陽地方・京阪神・関東地方などの都会に流れ、多くの過疎地を抱えておりその対策に苦慮しています。一方山陰地方を含めた田舎は都会と異なり、資源が豊富に残っており観光産業として成り立っています、また地価や物価も安く都会の生活に疲れた人や、農業に活路を見いだした人たちにとっては非常に魅力的な土地で、近年UターンやIターンで定住する若者も年々増加しています。このような状況もふまえて若者のさらなる受け皿を作るため、自然を破壊し工業団地や農地を新たに造成しようとする動きがあります。しかし安来や松江の内陸工業団地や、島根大学北部を中心としたソフトビジネスパークが建設或いは建設予定であり今以上に商工業用は必要であるとは考えられません。また、元々都会の生活に疲れたり自然の豊かな土地を求めて戻ってくるのであるので、都会と同じものを作ったり自然を壊してしまっては、全くの逆効果で転出者も増え更に過疎に拍車をかけてしまう可能性があると考えられます。もし干拓地・干陸地を他の用途に転用しようとするなら、公園・動物園・水族館・テーマパークなどのアミューズメント施設や教育施設なども視野に入れて多くの県民・山陰地区の住民がその利益を享受できるようなものを建設するべきであると考えます。

 

  (3)大根島の水利について

    前述のように大根島は透水性の強い地質であります、よって干陸化により押さえとなっていた海水の一部(本庄鉱区)がなくなり、地下の淡水レンズが維持できなくなり消失すると考えられています。対策として大根島周辺に承水路を設ける或いは、防水壁を設け囲むという案がでています。この案では確かに大根島の淡水レンズは保護されますが、工費に更に120億円以上の追加が必要となります。また、その効果も永久のものではなく10年も持たないであろうといわれており、さらなる公費の支出が予想されます。そして地下水の対流・淡水・海水の更新が行われにくくなり、水の停滞とともに異臭を放つようになったり、地下水が飲料水として使用不可能となったり、水路の維持が困難になったりと様々な問題点があげられています。よって、最終的には他地区から水道水を購入する(松江の水は高いし、住民感情から米子からは売ってもらえないでしょう)こととなりますし、淡水レンズの保護を行わない場合には農業用水も購入(松江の水は高いし、住民感情から米子からは売ってもらえないでしょう)しなければならなくなり、基幹産業であるボタン薬用人参の栽培にも影響を及ぼすと考えられます。また周りが海水のため地下水の枯渇とともに塩害も起こると考えられ、不毛の地と化すことも考えられます。この点について、干陸の実行においては島民の十分な議論とコンセンサスが必要であると考えます。

 

  (4)大根島の貴重な生物について

    大根島の溶岩洞窟には、この島固有の洞窟性生物が生息しています。昆虫のイワタメクラチビゴミムシ()と魚類のドウクツミミズハゼ()です。イワタメクラチビゴミムシは溶岩洞窟の中に住んでいます。ドウクツミミズハゼは溶岩洞窟と地下水脈の中に住んでいて井戸から採集されたこともあったようです。これらの生物は淡水レンズが存在しているために生息できるのであって、干陸に伴う淡水レンズの消滅とともに絶滅する危険性が指摘されています。

 

  (5)水鳥たちの生活について

    一般に水鳥たちの生活には餌場とネグラが必要で、どちらか一方がかけても水鳥たちは、安心して生活していくことができません。餌場は特に条件はありませんが、ネグラはヨシなどで周囲を目隠しされている浅くて広い水面が必要で、その昔白鳥海岸として有名だった安来の伊東海岸は、ネグラとして使われていた揖屋工区の完成とともにコハクチョウの飛来がなくなってしまいました。そのかわり周囲に本庄工区・安来の田畑・米子市橋本の田畑など餌場の豊富な彦名干拓地に飛来するようになり、水鳥公園が作られる元となりました。本庄工区には極めて多くの水鳥たちが餌場として利用しています、また水質もよく多くの水産資源が存在しています。今後この水面が干陸化されて消滅すると水鳥だけでなく、水産業で生計を立てている地元の人たちに多大な影響があると考えます。

 

4.総括

  (1)干拓の是非について。

    当初の農地利用という目的が諸情勢から大きく変わってきていて、多額の公費を投入する上で工法の変更・利用目的の変更・事業の中止を含めて島根県民のみに止まらず、近県や全国民も含めて大いに議論しどうするのか国民的コンセンサスを得る必要があると考えます。よってどんな結果がでるかに関わらず、是非を問う住民投票または国民投票を行い決着をつけるべきであると思います。

    また、中止した場合に今までかかった費用が、島根県の借金となると言うことを中止反対の理由に挙げていますが、本末転倒でさらに今以上に費用がかかることが明白で矛盾すると考えますし、国の方針が時代の先を読むことを失敗したわけですからその責任は、島根県民のみに追わせるのではなく税金の投入や隣接自治体からの拠出もやむを得ないのではないでしょうか。いずれにしても貴重な地球及び日本国民の財産である自然資源を破壊することになるわけですから、実施するにしても中止するにしても十分に慎重に検討すべき事柄であると考えます。しかし私としてはこの事業については即刻中止すべきであると思います。

 

5.宍道湖・中海関係のリンク

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