「あなたの命をすうタバコ」
〜禁煙外来の近況報告〜


医療法人市場医院 市場和志

平成18年度の診療報酬改定により条件付きではありますが、4月以降診療の一部を、さらに61日からは禁煙補助薬(ニコチネルTTS)にも保険適用が認められました。これにより、保険料3割負担の患者様の場合、3ヶ月でおよそ4万円かかっていた負担は12千円程度に抑えられました。


 当院では、平成165月より禁煙外来を開始しました。さらに平成171月より院内・敷地内完全禁煙とし、同年2月より鳥取県認定禁煙施設となっています。入院設備もあることから、当初は喫煙患者様からの抗議や、院内での喫煙、医院周辺へのポイ捨てが多発するのではないかと心配しました。しかし施行後目立った問題は生じず、かえって「以前は病気で来ているのに院内がタバコ臭く、余計に気が滅入っていたので、院内の空気が綺麗になってうれしい。」と多くの御賛同を得ることが出来ました。


 平成184月からは禁煙治療の医療保険適用医療機関に認定され、より多くの患者様の禁煙支援が出来るようになり、よろこばしく思っております。今回、保険適用となったことを機に、医療機関での完全禁煙が拡がるきっかけになることを期待しております。


 実際の禁煙治療の流れですが、標準的な治療プログラムは、12週間にわたり計5回の禁煙治療を行います(初回診察に加えて、禁煙開始2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の4回の再診で構成)。

 当院での治療成績は、平成186月から平成195月までに当科で禁煙指導を行った110例中12週間経過した101例を対象とすると、ニコチン依存症治療を5回すべて終了した患者は60例(59.4%)、そのうち禁煙成功例は42例(41.6%)でした。(中医協の行った全国調査の平均はそれぞれ28.4%21.0%


 全国平均より成績が良かった要因としては禁煙継続の為のアドバイスや再診勧誘等の電話での受診干渉によるものが大きいと思われます。標準禁煙治療プログラム以外にも、その人に合った細やかな指導を行うことが禁煙成功率アップにつながると実感しております。とはいえ、まだ3ヶ月の短期成績である為これからも長期的なフォローアップは必要です。


 禁煙を山登りに例えると、ロープウェイにあたるのがニコチンパッチ(ニコチネルTTS)であり、シェルパ(山岳地方の案内人)にあたるのが我々禁煙指導医です。一人で登山するのは辛いですが、ロープウェイを使用して8合目まで登り、シェルパと助け合いながら頂上まで向かうと負担が減ります。


 また、登山のゴールは登頂(禁煙成功)ではありません。登頂はあくまでも通過点であり、大切なのは安全に下山することです。禁煙に成功してもまわりの人が喫煙者であれば、当然受動喫煙でタバコの害を受けます。


 私は「下山=まわりの大切な方々に禁煙の輪を広げていくこと」だととらえ、禁煙指導終了時(卒煙式といっています)に禁煙成功者へ説明しています。


 これを機会に「タバコを止めてみようかな?」という思いが一瞬でも頭の中をよぎった方がおられたら是非御来院下さい。よろしければシェルパ役を勤めさせていただきます。



「自分だけの健康」は本当の健康でしょうか?皆様が「みんなの健康」を求めれば、「本当の健康」を感じることができるのではないでしょうか?